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酵素シロップに効果なし! いつまでも騙され続ける人々

   


怪しさ満点、酵素ダイエットという名の宗教

酵素ダイエットとは、要するに胡散臭さ100パーセントの飲むだけで痩せられる系の、定期的に出てくる例のアレである。

この怪しい伝説が生まれたのは、やはり楽をして痩せたいという強力な欲望からであろう。おそらくこのような怠惰は今後もなくならないに違いない。

そして、そこに便乗してお金儲けをしているサプリメント販売業者やマスメディア、あるいはバックでももらっているのかステマ活動に勤しむ芸能人、彼らの商売根性は実にあっぱれだと思う。

何も知らない人はいつの時代もカモにされる運命にある。

テレビで大々的に取り上げられるようなものはだいたい嘘なんじゃないかと疑ったほうが、自分の財布や時間の節約に大きく貢献することになると思うよ。

そこで、いまだに跋扈する酵素伝説をちょっと詳しく俯瞰してみよう。

致命的な問題点一覧

栄養素ではない

酵素は重要な栄養素であるというが、実際には栄養素ではなく単なる触媒である。

栄養素というのは食品中に含まれる物質で人間の身体に必要不可欠な成分のことだが、酵素はそれぞれに固有の化学反応を触媒する物質にすぎない。

酵素自体が必須であることは間違いないが、人間に必要な酵素というのは、遺伝子の塩基配列に従って必要なときに必要なだけ新たに合成されるので、そもそも外部から摂取する必要などないのだ。

もっとも、酵素がタンパク質であるという点をもって、これを曲解することはできる。つまりタンパク質自体は三大栄養素の一つだからだ。

そもそも補給できない

これこそまさに致命的といっていいだろうが、酵素は体外から補給できない

酵素はタンパク質の一種であって、タンパク質はアミノ酸がペプチド結合したものである。

したがって、酵素が体内に入ると胃酸やタンパク質分解酵素によってごく普通に消化の過程を経て吸収されるだけで、狙った酵素の形を保ったまま吸収されることはない。

結局のところコラーゲンなんかもそうだが、酵素を外部から摂ることは、すなわちアミノ酸を摂取することと同じなのである。

最終的にアミノ酸に分解されてから吸収されるのであって、必ずしも体内でもとの酵素として再合成されるわけではない。

さらに酵素には活性に最適なphや温度、湿度などがあって、これらに非常に大きな影響を受けることを忘れてはいけない。

こと人間においては、胃酸に含まれるペプシンのような一部の例外を除けば、酵素は胃の中のような過酷な環境下では変性してしまい、失活して触媒としての機能を果たせなくなる。

なかには強酸にも加熱処理にも耐えるなどという怪しい謳い文句をひっさげている商品があるようだが、体内と同じ環境下で分解酵素に影響を受けないことが証明されなければ何の意味もない。

不足することはない

人体におけるあらゆる活動は酵素によって実現しているといっても過言ではなく、だからもし酵素が不足するようなことがあったら致命的な状況に陥るのは間違いない。

心臓を動かしたりものを見たり聴いたりするのにも必要なものであって、これがたかが生活習慣や食生活の変化ごときで簡単に大きく増えたり減ったりしたら、それこそ大変なことになってしまう。

酵素は触媒であって化学反応の前後で変化しないから、一度使われてなくなるようなものではなく、何度でも使われるので、もともと酵素を補うということ自体に意味がないのである(合成から一定期間が過ぎると酵素は分解されるが、必要があるかぎりふたたび合成される)。

さらにいえば、人体に備わっている酵素に関係するシステムは、食品中に含まれる生きた酵素をとらなければ生きていけないような脆弱なしろものではない。酵素を作るための情報は全て遺伝子に刻み込まれていて、合成・分解の過程は体内で完結している。

また、人体において合成される酵素の生産量に上限があるなどという事実は認められていない

消化酵素と代謝酵素に大別できない

人体の酵素は何千種類、もしかすると何万種類もあって(厳密には何種類あるのかよくわかっていない)、それぞれが固有の全然別の働きを持っているので、消化酵素と代謝酵素という乱暴な二元論で語るのはかなり無理がある。

消化酵素を摂取すれば食物の消化が促進されるので、本来体内で合成するぶんの消化酵素が節約される……などというデタラメがよく見られるが、食品がまだ生きていたころに(消化酵素を持っていたころに)どうして自分自身が消化酵素で消化されなかったのか、あるいはなぜ人の胃の中に入ったときだけ都合よく効果を発揮するのか、甚だ疑問である。

なお、代謝に関わる酵素よりも消化に関わる酵素のほうが優先されるという事実は認められていない。

酵素ドリンクに酵素は入っていない

すでに述べたように、酵素は非常にデリケートなタンパク質で、ごく一部の例外を除けば、熱や酸によって変性してしまう。失活した酵素はまさにただのタンパク質である。

日本の食品衛生法では、酵素ドリンク(分類は清涼飲料水)はph4.0未満ものもは65℃で十分間、ph4.0を超えるものは85℃で三十分間の加熱処理を行って殺菌すること、もしくはこれと同等の効力を持つ方法で殺菌処理を行うことが規定されている。

一度失活した酵素がふたたびその働きを取り戻すことはない。たとえば、卵を加熱してゆで卵を作ったあと、それを冷ましても生卵には戻らないのと同じようなことである。

そういうわけで、市販の酵素ドリンクには活性のある酵素は含まれていない

また、さきほども述べたように、加熱処理をしていないサプリメントのたぐいであっても、そもそも酵素としては吸収されないので、いずれにしても意味はない。

酵素ドリンクが効果を発揮する真の根拠

では酵素ドリンクを摂取する意味はまったくないのかというと、必ずしもそうとはいえない。

もちろん酵素自体は摂っても無駄なので、酵素ドリンクが効力を発揮するであろう理由としては、あくまで発酵食品としての効果がメインとなる。

そしてダイエット目的ということであれば、単純に食事を酵素ドリンクに変更したために全体的な摂取カロリーが減少し、結果的に痩せただけということである。

根拠1 発酵食品としての性質

酵素ドリンクは発酵食品である。要するに原材料を微生物の力を使って発酵させたものなのであって、基本的にはヨーグルトや納豆と同じだ。

なかでも酵母菌などは熱に強いものがあるので、もしかしたら酵素ドリンクのなかには、法律で義務付けられている加熱処理を行っても死滅しない微生物が含まれている可能性がある。

酵母菌や麹菌を摂取することについてはここでは仔細言及しないが、これらについては本来その食品中には含まれない栄養素を新たに生み出してくれていたり、脂肪細胞の肥大を防ぐというダイエットへの有効性が示唆される短鎖脂肪酸を作ってくれたり、アミノ酸を増やしてくれたり、腸内で善玉菌の餌になってくれたりと、色々のメリットがあることは間違いないので、結果的には摂取するメリットは充分にあると思われる。

しかし、そうなるとそもそも酵素ドリンクを飲む必要はなく、はなっからほかの安価な発酵食品や乳酸菌飲料を(含まれている菌をよく調べて)狙って摂取すればいいだけの話になるわけで。

酵素ドリンクのほうがごく一般的な発酵食品よりも圧倒的に多くのビタミン、ミネラル、アミノ酸などを含有しているとか、そういう特有の違いでもなければ、アホみたいに高い金額を出してまで買うべきものでは全くないということだ。

そしてそれらのデータはなぜか調べても全然出てこない。

根拠2 たまたま総摂取カロリーが減っただけ

これは要するに、酵素ドリンクを飲むかわりに炭水化物などを抜くとか、食事を減らすなどした結果として痩せたというだけの話で、別に酵素ドリンクの効果で痩せたわけではないということだ。

それだったら単純に食事を抜いてりゃいいんじゃね? ということである。

おそらく食事の内容を変更せずに酵素ドリンクを追加したら、痩せるどころかいっそう太るに違いない

まとめ

酵素ドリンクはわざわざ高いお金を出してまで飲む必要はない。

自分で作ってもいいが、どっちみち酵素は吸収されない。

アミノ酸として吸収されるわけだから、タンパク質豊富な肉を食べたり、最初からアミノ酸のサプリやプロテインを摂取したほうが遥かに効果的。

発酵菌が生きている酵素ドリンクは何かしらの効果を発揮する可能性は残されている。

数多くの野菜を原料とするなど、大量のビタミンやミネラルなどが入っていることがはっきりしているものに限っては、これを栄養補給目的で摂取する場合、無意味とはいえない可能性がある。

 

いじょ!

 

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